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ドイツ建築視察 2014

2014.03.13

 

 

第一回ドイツ、ベルギー視察旅行編2014.0219~0224 小出 克敏

 

■目的  ドイツ、ベルギーの世界遺産建築及び街並みと現代建築の視察。

歴史的建築と現代建築のデザインの融合を視察する。

■ 期間 2014.02.19 朝成田出発 ~ 2014.02.24 夕方成田着 6日間

■ 視察先

・ ドイツ(ケルン)世界遺産ケルン大聖堂、ケルン近郊の現代建築視察

・ ベルギー(ブリュッセル、ブルージュ)  

ブリュッセル:世界遺産グランプラス、市街視察

ブリュージュ:世界遺産旧市街、ベギン修道院など視察 ・フランス(パリ)

・パリ市内建築視察

 


 

1 ドイツ(ケルン)

フランクフルト空港着後専用車にてケルンへ向かう。

ホテル着は夜のため、ドイツ料理のソーセージを食してホテルへチェックイン。

翌日、世界遺産のケルン大聖堂を視察する。建設開始から、完成までなんと600年を要しているとのことで、目の前の高さ157mの大聖堂を見上げると感慨もひとしおである。

建築はゴシック建築で、外観は豪華な彫刻装飾が施されている。

残念なのは、昨今の酸性雨による影響なのか表面が多少黒ずんでいた。

ただし、ひとつひとつの繊細な彫刻は、中世の人々の精神を感じることができる。 この大聖堂でもっとも感動したのは、外部の装飾より、むしろ荘厳な内部空間である。広場に面した西正面より内部に入る。

内部は、身廊と呼ばれる幅の広い中央の部分と、その両側の側廊と呼ばれる幅の狭い部分からなり、身廊と側廊は列柱で分かたれる。

身廊は側廊より天井が高く、列柱の上方にはアーチ型のステンドガラス窓が設けられており、そこから降り注ぐ光のシャワーは神の存在を感じざるを得ない気分にさせられる。壮大な空間は、そこで太陽の動きに合わせて光の移動が始まることを想像すると、何時間でもその空間に身をゆだねたいと思わせてくれる。

ちなみに、ケルンは香水のオーデコロンの発祥地とのこと。

1792年婚礼の祝福として修道士から一枚の羊皮紙を授かり、そこに記載されていた処方に従って製造したのが『不思議な水』。

ナポレオン時代ナポレオン軍のドイツ占領時に、不思議な水を “オーデコロン(ケルンの水)”という名前とともに本国フランスの家族や恋人に送ったこで、その後フランスからヨーロッパへ、そして世界中へ広まったらしい。

ライン川が流れ、歴史ある建築物が多いこの街は、今も中世の面影を残している。歴史的ファーサードの中に現代風デザインがうまく埋め込まれ全体的に違和感なく溶け込んでいた。また、街並みの普通の建物でも配色の使い方がうまく、風景の形成にきれいにマッチしているのが印象的である。

市内の現代建築は、ピーク&クロッペンブルクの店舗を視察した。

設計は、関西国際空港の設計でおなじみのレンゾ・ピアノである。

外観は、まゆタマを横にしたような外観でガラスをまとったシンプルなデザインで古い町並みにうまく溶け込んでいた。表層のガラス部分は弓形に曲げた集成材にコネクタを経由してガラスのフレームバーに固定している。外装周りは吹き抜けを形成することで弓形の木質フレームを強調させていた。

もうひとつは、聖コロンバ美術館を視察した。戦争で廃墟と化した、後期ゴシック建築の聖コロンバ教会の上にそのまま建てられており、中は遺跡、美術館、教会になっている。建物は、コンペで当選したスイスの建築家ピーター・ズントーの設計である。

オープンブリックワークを用い幅の薄いレンガを積層し、隙間から光や空気を取り込んでいる。

暗い展示空間に隙間から差し込む帯の光は幻想的で美しい。

積層されたレンガは、新築の建物であるが時を経た建物のように街になじんでいた。時間の関係で、遺跡部分しか内部に入れなかったのが残念であった。

 

 

 

2 ベルギー(ブリュッセル、ブルージュ) 

3日目は、ドイツ高速鉄道(Thalys)にてベルギーのブリュッセルに入った。

ブリュッセルでは、世界遺産のグランプラスを視察。グランプラスは、ブリュッセルの中心にある縦110m×横68mの長方形の広場で15~17世紀の建物である市庁舎、王の家、ギルドハウスなどが広場を囲んでいる。広場に立つと、周辺の建物は当時の様相を呈しており、中世にタイムスリップしたような錯覚を覚える。 広場自体は、単なる石畳の造りでローマのカンピドリオ広場のような派手な模様はない。広場のシンプルさ故に広場に面した建物の装飾が際立つ効果があると感じた。

グランプラス広場の脇道を通ると、有名な『小便小僧』の像が立っている。

想像以上に小さいのでびっくりした。斜め向かいにゴディバのお店があったので小休止にチャコレートをお土産で買う事にした。

周辺の建物は、古い建物が林立し、その中に、ファーサードのみ改修したと思われる現代風の建物が建っていた。やはり、ここでもドイツと同じように違和感のない造りで周辺建物に溶け込んでいた。

午後は、伝統工芸に代表されるレース産業が盛んで、世界遺産にも定められた街並みのブルージュ旧市街を視察した。
ブルージュは、15世紀に大きく繁栄をし、商業と織物手工業が、町に富と豊かさをもたらした。

奇跡的に第二次世界大戦下においても破壊されず美しい街並みを残したそうである。マルクト広場を中心に鐘楼や建物群が取り囲むように配置され、少し歩くと市街の随所に幅の狭い運河が通じ、赤レンガの建物が水路に面し並んでいる。水面に映る建物の映像と相まって観る風景は、美しすぎて絵画を観ているようである。ブルージュで最も美しいと感じたのは、ベギン会修道院の建物と周辺風景との絶妙なコントラストであった。

静寂な空間にたたずむ白亜の建物は、石畳みの道と周辺の緑とが見事にマッチングしている。ちなみに、ガイドの話によれば、このベギン修道院が、オードリー・ヘップバーン主演の『尼僧物語』のロケ地という事であった。

 

 

3 フランス(パリ)

最終日は、飛行機搭乗までの待ち時間でパリ市内を視察した。時間の関係上、オペラハウス、ルーブル美術館を駆け足で通り過ぎ帰国の途に就いた。

今回の視察は、盛り沢山なスケジュールのためじっくり建物内部まで視察する時間が無かったが、大変記憶に残る貴重な視察となった。

 

■ まとめ

今回の視察を通し、市民が街を愛していて、そしてその街を形成している各建築物が無造作に建ててなく、きちんと考え抜かれたデザインであることを強く感じた。特に色の使い方や、古い建物と新しい建物がうまく共生して独特な美しい印象を街並みにもたらしている。

翻って、日本をみた場合1980年代『ポストモダン』の時代、チャールズ・ジェンクスが建築の多様性をとなえ、キッチュな建物表現が脚光をあびた日本の秋葉原や新宿のにぎわいが、都市にもたらす雑踏な景観は今や陳腐な都市景観に思えてしまう。

建築行政においても、景観条例なる一律な配色を求め、挙句の果ては、魅力のない街並み形成を推し進めている現状を思うと、ヨーロッパの街並みを視察して疑問に思うのは私だけであろうか。むしろ景観条例で、建物の色の規制を行うのではなく、あの見苦しい袖看板や広告塔、広告チラシの建物への貼り付けなどを規制した方がいかに効果があるか思えて仕方がない。ひとつ、ひとつの建物の集合体が魅力ある街並み形成を担っていると、改めて強く感じた今回の視察であった。

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